私の読書遍歴(3)―高校時代篇
中学生時代篇の続きです。
小説のあいまに人文社会系の本を読んでいた中学時代に比べて、高校に入ってからはかなり幅広く読書をするようになりました。今思うと十分に理解できていなかったものも多いですが、少し背伸びをして難しい本を読んだことは、その後の力になったように思います。
1.桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』(2004年、富士見ミステリー文庫)
ひとつだけ小説もご紹介しておきます。桜庭一樹は当時もっとも読んでいた作家で、他にも『少女には向かない職業』や『少女七竈と七人の可愛そうな大人』などが好きでした。これらに共通するモチーフは、タイトルからもわかるとおり、少女です。当時、男子校に通っていた私は、小説を通じて少しでも同世代の少女のことを知りたかったのかもしれません。
2.宇野常寛『ゼロ年代の想像力』(2008年、早川書房)
当時は批評も読んでいた記憶があります。この本は90年代とゼロ年代(2000年代)のサブカルチャーを比較した評論で、当時流行していました。中学生時代に読んでいた『涼宮ハルヒ』シリーズに対する解釈について、かなり影響を受けた記憶があります。
3.的場昭弘『超訳「資本論」』(2008年、祥伝社新書)
『共産党宣言』のせいでマルクスにかぶれた私を、さらに重症化させたのがこの本です。当時の私には『資本論』は難しくてよくわからなかったのですが、この本はわかりやすく、説得力があるように思えました。
『超訳「資本論」』はこの後の「超訳」ブームの先駆けとなる著作なのですが、それ以後の粗製濫造された著作とは異なり、ある程度きちんとした一般向け解説書になっています。
4.マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(大塚久雄訳、1989年、岩波文庫)
マルクス主義に染まっていた私に、それを抜け出すきっかけを与えてくれたのがこの本でした。著者マックス・ヴェーバーは、近代資本主義がプロテスタントの宗教的教義から発展してきたことを社会学の視点から明らかにします。これは、(ヴェーバーの考え方とマルクスの考え方が厳密な意味で両立不可能であるかは別として)下部構造―つまり資本主義という経済システム―が上部構造―宗教や思想―を決定するのだというマルクスの教義を相対化する視点を与えてくれました。とても価値ある読書だったと思います。
ヴェーバーの本では、他に『職業としての学問』と『職業としての政治』が印象に残っています。特に前者は、大学生活を送るうえでとてもためになりました。
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5.J.S.ミル『自由論』(塩尻公明・木村健康訳、1971年、岩波文庫)
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自由主義の古典的著作です。表現の自由や個性の尊重を主張するこの著作は、マルクス主義と心理的に距離をとっていた私に、自由主義という新しい政治思想上の基軸を与えてくれました。
大学時代篇に続きます。