私の読書遍歴(2)―中学生時代篇
小学生時代篇の続きです。
今回は中学生時代篇です。小学生のころはミステリ小説一辺倒だったのですが、この頃は当時流行していたライトノベルや、人文社会系の古典などにも興味ができて、読書の幅が広がった記憶があります。
1.乙一『GOTH』(2005年、角川文庫)
中学生の頃読んだミステリでは『GOTH』が一番印象に残っています。グロテスクな描写と登場人物の異常さに魅力を感じた記憶があります。いわゆる「中二病」的な本ではありますが、短編ミステリの秀作が揃っています。
乙一には、「黒乙一」と呼ばれるグロテスクな描写の多い著作のほかに、グロテスクな描写の少ない著作(「白乙一」)もあり、なかでも「手を握る泥棒の物語」という短編が好きでした。
2.太宰治『人間失格』(2006年、新潮文庫)
中二病のバイブルといえば、この本しかありませんよね。実は『人間失格』は小学生のころに一度読んだことがあったのですが、そのときは面白さが理解できず、中学生になって読み返してから、「この本は私のために書かれたのだ」という月並みなことを考えたことを思い出します。
日本文学の名著であることは誰も否定しないでしょう。大好きな本です。
3.谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』(2003年、角川スニーカー文庫)
当時中学生の間で流行していた小説といえば、この本を置いてほかにありませんでした。特徴的な冗語体は、「ライトノベルのおかしな文体」の代名詞ともなってしまいました。しかし、魅力的なキャラクターと引き込まれるプロットを備え、宇宙人や未来人への憧れという90年代セカイ系文化の要素と、高校でのサークル活動や恋愛というゼロ年代日常系の要素とを見事な融合させた名作であることは論をまちません。
4.マルクス・エンゲルス『共産党宣言』(大内兵衛・向坂逸郎訳、1971年、岩波文庫)
もうひとつ、このあとの人生に大きな影響を与えたのは、『共産党宣言』でしょう。マルクスやエンゲルスの学説は20世紀を通じて一貫して批判の対象となってきましたが、『共産党宣言』の政治思想書としての魅力は否定しがたいところがあります。また、よく指摘されるように、彼らがマニフェストとして掲げている公約は、戦後の日本で多く実現されてきました。彼らの思想は、西側諸国も含めて、実際に世界を動かしてきたのです。
この本は中学生の私には刺激が強く、少しの間マルクスかぶれになってしまったりしたのですが、今から振り返れば成長の上で必要な過程だったのでしょう。
5.デカルト『方法序説』(谷川多佳子訳、1997年、岩波文庫)
- 作者: デカルト,Ren´e Descartes,谷川多佳子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/07/16
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言わずと知れた近代哲学の名著ですが、「我思うゆえに我あり」という有名な主張にはあまり魅力を感じなかった記憶があります。むしろ、彼の人体についての記述を面白く読んだ記憶があります。ものごとに対するとらえ方が時代によって異なるということは当たり前のことに思えますが、翻訳であっても昔の人が書いた著作を読んで目の当たりにしてみると、衝撃的なものです。
高校篇に続きます。